伊東’s メッセージ 2011.7

D’où venons-nous ? Que sommes-nous ? Où allons-nous ?
(我々はどこから来たのか、我々は何ものなのか、我々はどこに向かうのか)

21世紀初頭に起こった二つの事件は、われわれの世界に対する見方を根本から変えてしまった。

(1) 9.11の事件は、世界に安全な場所はどこにもないこと、政府は我々を守ることなどできないことを見せつけた。事件後もオサマ・ビン・ラデディンは10年以上も活動をつづけた。米国はそれを止めるために何十億ドルも支出しておきながら、その過程で、うかつにもより多くのテロリストを作りだしてしまったにすぎない。

(2) 巨大な地震と津波は、大自然の災害対して我々は全く無力であること、科学技術は我々を守ることなどできないことを見せつけた。地震と津波に対し、世界最高の備えを行っていた日本でさえ、壊滅させられてしまった。日本では今、より一層多くの人々が原子力エネルギーに反対し始めている。

また、現在人類の営為が地球環境に与えている主に三つの影響とそれによるかつてなかった変化が明らかになりつつある。
(1) 人類の活動により気候変動が大きくなりつつある。
(2) 古いエネルギー源は価格が上昇しつつあるか、終わりを迎えつつあり、新たなエネルギー源は、いままでのものほど便利でも、安価でもない。
(3) 淡水はますます不足しつつある。

これらの出来事は、人々の自らの生き方と世界にたいする考え方に、根本的な影響を与えている。長いあいだ、「真面目にやっていれば生活はますます良くなってゆくものだ!」と考えられてきた。しかし、「ますます良くなる」とは「より多くの物とサービスを得ること」という意味ではなかったか。

今、我々はターニングポイントを迎えている。これまでと同じようにやり続けるのか、それとも違う道を選ぶのか?現代文明の意味とは何か?次の10年間、どのような生活を設計したらよいのか?われわれ自身の生活だけでなく、数世代後の我々の子孫がおかれるで有ろう状況を慮りながら、現時点での最良の行動を選択することを迫られている。一体何が一番いい行動なのか?

8月のワークショップでは、新体道で開発されたからだの叡智を通して、これらの問題にアプローチしていきます。ポール・ゴーギャンの傑作 “D’où venons nous? Que sommes-nous? Où allons-nous?“ (我々はどこから来たのか、我々は何ものなのか、我々はどこに向かうのか)にみられるこの”問い”を深く探索しながら。

準備として以下を考えてください
・ポスト・ピークエナジー世界(電気エネルギーのピークを過ぎた世界)において、われわれはどんなふうに、稽古を続けていったらよいのか(生活の簡素化)?
・高齢化社会にどう対処していったらよいのか(恐れずに死を迎える道)?
・続く次の世代をどう育成していったらよいのか(「よき生活/生き方」とは何かを考えるうえでの今までと違う新らたな視点)?

最後に雑多な思いを打ち分けたワタシの意を汲んで、英語でこのメッセージを編集してくださった、リー・シーマンとトミ・ナガイ・ローテに感謝します。
また、英語の本文を反芻して平明な日本語のメッセージに翻訳してくださった飯田宗一郎と松山晋一の両兄にもとっても感謝しています!

伊東不学